Happy Birthday


「ねえねえ、ゼフェル。明日ってルヴァ様の誕生日じゃない。守護聖みんなでパーティーしない?」
公園でメカチュピを飛ばしていたゼフェルにマルセルは声をかける。
「あー?ルヴァの誕生日だー?だからって、何でパーティーなんかやらなきゃならねえんだ?」
「だってルヴァ様にとって一年に一度の日じゃない。そんな日に一人でいるのに、みんなでいるほうがいいじゃない」
「んなもん知らねーよ。ちっ、まだ安定感がねーな」
ゼフェルはそう言い、地面にあぐらをかいて座ると工具を取り出し、メカチュピの調整を始める。
「ねぇ、ゼフェルー」
「だいたいルヴァだって、もう祝ってもらうような年じゃないんだしよー」
「でもね、やっぱりルヴァ様がこの世に生を受けた日。みんなで感謝しなきゃ」
「やあ、マルセルにゼフェル。いったい何の話をしてるんだい?」
ゼフェルとその横に座り込んでいるマルセルにランディは声をかけた。
「あー、ランディ。いいところに来たー。明日ってルヴァ様の誕生日でね。みんなでパーティーしたいなーってゼフェルと話してたの」
「いいじゃない。ぜひやろうよ」
「俺は知らねーからな」
乗り気になるランディを横目にゼフェルは言う。
「いいよー。やりたくなければやらなくても。ランディと計画立てるからね」
「じゃあ、手分けして他の守護聖様にも声をかけに行こう」
何も言わないゼフェルにランディは
「ゼフェルはどうするんだい?」
と声をかけた。
「けっ。メカチュピの調整も終わったし、二人で回るよりも三人で回るほうが早いだろ。手伝ってやるよ」
「もー。素直じゃないんだから」
「なにおーっ!」
「まぁまぁ、二人とも喧嘩は後にしてさっさと声をかけに行こう」
「ランディのくせに、何しきってんだよ」


コンコン
「ジュリアス様失礼します」
マルセルはそう言いジュリアスの部屋のドアを開けた。ジュリアスは書類に囲まれ仕事をしていた。
「マルセル。そなたか」
「お仕事中にすいませんジュリアス様。明日ルヴァ様の誕生日だって、ご存知ですか?」
「ああ、ルヴァとの付き合いは長いのでな。それがどうした?」
「実は、明日ルヴァ様のお誕生日を祝って、簡単なパーティーを開きたいなーと思いまして、ジュリアス様にも参加してもらえないかと・・・」
マルセルは様子を窺うようにジュリアスを見た。
「それは良い考えだ。ぜひ私も参加させてもらおう」
「本当ですか?ありがとうございます」

「さてと、次はオリヴィエ様を誘いに行かなくっちゃ」
マルセルはそう言うとオリヴィエの執務室へ向かった。
コンコン
「オリヴィエ様失礼しま…」
「ちょーっとまった」
オリヴィエの部屋のドアを開けかけたマルセルにオリヴィエの声が刺さった。
しかしちょっとのタイミングのずれでマルセルはドアを開けた。
「ぎゃー。お・おばけ―――」
「マルセル落ち着きなさい。パックよパック。今落としてくるからちょっと待ってなさい」
硬直状態のままのマルセルをその場に残し、オリヴィエはパックを落としに行った。
「誰が、おばけよ。んとに失礼しちゃうわ。だから【待った】って言ったのに」
ぶつぶつ言いながら戻ってきたオリヴィエは未だに硬直しているマルセルを見た。
「ちょーっと。マルセルちゃん。いつまで固まってるの?そろそろ戻らないとお化粧しちゃうわよ」
「や、やめてください。オリヴィエ様〜」
お化粧と言う言葉に反応したのかそう言い、マルセルは後ずさりする。
「あ〜ら、気がついちゃったのね、面白くない。で、私のお肌ケアの時間に何の用なのかしら?」
「あっ。オリヴィエ様すいません。実は。明日ルヴァ様の誕生日なんです。それで、ちょっとしたパーティーをしようかなと思って、お誘いに来たのです」
「パーティー?そりゃもう、参加するに決まってるじゃない。当日のメイクは私にお・ま・か・せ☆待ってるからね」
「遠慮しまーす」
マルセルは泣きそうな顔でオリヴィエの部屋を後にした。


「クラヴィス様失礼します」
ランディはそう言うとクラヴィスの部屋のドアを開けた。
あいかわらず、日の射さない部屋でクラヴィスは一人水晶を見ていた。
「クラヴィス様。お仕事中にすいません」
いつまで経っても水晶から視線をはずさないクラヴィスにランディは再度声をかけた。
「ランディ。それはイヤミか?」
「い、いえ。そ、そんな」
ようやく視線をあげたクラヴィスはランディを見ると、
「冗談だ」
とぼそりと言った。
「で、何のようだ?」
「実は明日はルヴァ様の誕生日で、もしよろしければパーティに参加して頂けないかと・・・」
「パーティー?」
「はい、ちょっとしたものですけど、みんなでルヴァ様の誕生日をお祝いしてあげようと思いまして・・・」
「フッ、そう言うことなら参加させてもらおう」
「本当ですか?ありがとうございます。では失礼します」
ランディは頭を下げるとクラヴィスの部屋を後にした。

「さてと、次はオスカー様だな」
ランディはそう言うとオスカーの執務室へ向かった。
コンコン
「オスカー様。いらっしゃいませんか?」
ドアをノックし声をかけてみるが、中から返事がない。
「オスカー様の行きそうな所といったら・・・」
ランディはそうつぶやくと、公園に向かった。
「あっ、いた」
公園の奥にあるカフェにランディの読み通りオスカーがいた。
「オスカー様。何をしてるのですか」
「えっ、あっ。ラ・ランディか。おどかさないでくれ―――で、俺に何か用か?」
人間ウォッチングをしていたオスカーは、動揺を隠すように言葉を続けた。
「明日ルヴァ様の誕生日なので、ちょっとしたパーティーを開いてお祝いをしようと思うのです。それでオスカー様にも参加して頂けないものかとお誘いに来たのですが」
「なかなか楽しいことを計画したものだな。もちろん、参加しよう。なんてったって、ルヴァにとって1年で一度のお祝いだからな」
「ありがとうございます。では、失礼します」
「ちょっと待て。ランディ」
ランディはお礼を言い、立ち去ろうとした時、オスカーがランディを呼び止めた。
「何ですか?オスカー様」
「えっとだな。俺がここでサボっていた事をだな」
「あー。ジュリアス様には内緒にしててということですね」
ランディはオスカーの言葉を続けて言うと、
「わかりました。では失礼します」
と言って、公園を後にした。


「おい、リュミエールじゃまするぜ」
そう言い、ゼフェルはリュミエールの執務室のドアをノックもせずに開けた。
「げっ、ル・ルヴァ」
「なんですか、ゼフェル。いつも口の利き方には気をつけなさいと言ってるでしょう」
ゼフェルは、いきなり説教を始めるルヴァからリュミエールに視線をずらし、
「わりーな。お茶の邪魔して。リュミエールまた来るわ」
と言った。
「ゼフェルお茶でも飲んでいきませんか?」
「お前らとお茶を飲んでるほど暇じゃねーんだよ。またな」
お茶を入れに席を立つリュミエールに、そう言うとゼフェルは出て行った。
「はー。びっくりした。まさかリュミエールの所でルヴァにはちあうとは思ってなかったぜ。でもここで会ったと言うことは、あいつらがルヴァとはちあうことはねーな」
ゼフェルがリュミエールの部屋を出ると、マルセルが歩いて来た。
「あっ、ゼフェルー。リュミエール様参加してくれるって?」
「それがよー。ちょっとこっちこい」
「な、何?」
マルセルはゼフェルに腕を引っ張られ、ゼフェルの執務室前まで連れて行かれた。
「ゼフェルどうしたの?」
「それがよー。リュミエールの執務室にルヴァがいてよ」
「えっ?もしかしてバレちゃったの?」
「オレがんなへまするかよ。まぁおめーらだったら知らねーけどよ。リュミエールにはまた後で伝えておいてやるぜ」
「じゃ、リュミエール様にはきちんと伝えておいてね!忘れないでよ」
そう言うと、マルセル・ゼフェルともに部屋に戻った。

することのなくなったゼフェルは自分の執務室へ戻り、メカチュピのメカチュピの最終調整をしていた。
コンコン。
そこへ部屋をノックする音が聞こえてきた。
「あいてるぜ」
ゼフェルはドライバーを持ったまま、ドアに向かって声をかけた。
「ゼフェル。失礼します」
そう言って部屋に入って来たのはリュミエール。
「おう。リュミエールか。オレになんか用か?」
「いえ、私があなたに用があるのではなく、あなたが私に用があるのではないのですか?」
リュミエールにそう言われ、すっかり忘れていたゼフェルは顔を上げた。
「そうそう、オレがリュミエールに用があったんだったな」
ゼフェルはメカチュピと工具を机の上に置くと、早速口を開いた。
「あのよ。明日なんだけど、なんか用事あるか?」
「明日ですか?特には。普通に執務があるだけですよ」
リュミエールは【それが?】と言う顔で首を傾げた。
「じつはよ。明日ってルヴァの誕生日でさ。マルセルとランディがちょっとしたお祝いパーティーするんだって張り切っててよ。もし、良かったら参加してやってくれないか?」
「そう言う事だったのですね。ルヴァ様がすごく気にされていましたよ。あなたに嫌われたのかと…」
「何っ!んなことねーよ。アイツにはいつも感謝してる。だからこそ、明日はきちんと祝ってやろうと思ってんだよ。で、どうすんだ?参加してくれるのかよ」
「ええ、もちろん。参加させていただきますよ」
「そっか。よかったぜ。悪かったなわざわざ足運ばせちまってよ」
「気になさらないでください。では私はこれで失礼いたしますね」
リュミエールはそう言い、ゼフェルの執務室から出て行った。
一人になったゼフェルは
「さってと、明日ルヴァにやるものをつくらなきゃな」
と言って、プレゼントのためのメカ作りを始めた。


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